アルフォンス・ミュシャ展@東京都美術館

昨日行ってきました。見たことの無いものもいろいろ見れてよかった。スラブ叙事詩展のポスターとか感動したなー。ミュシャといえばリトグラフ、ですがパステルでの習作もミュシャ財団の手によって修復されていて、それを多く見れてよかった。特に気になったのは「森の中の少女」というパステルの習作。これらは習作なので、タイトルは仮につけられたものだそう。黒と青のパステルで表現されたその絵は、森の中で踊る少女が月光に照らされたさまを描いている。すごく神秘的な絵だ。どことなくジプシーとか魔女とか、そういうイメージを思い起こさせる。ミュシャの生まれたところはチェコのモラヴィア地方。もともとは遊牧民族ですからそういうジプシーの教えとか魔女の知恵とか、そういうものが血の中に入っている人だったんではないでしょうか。
二つ、気になることを備忘録として書きます。
一つは「芸術」の4作、「絵画・詩歌・音楽・舞踏」のうちの「音楽」。いずれも円環上の装飾の中心に女性が描かれた作品ですが、音楽の円環の中に描かれた親指を立て中指を突き出した右手のサインにはどんな意味があるのか。ミュシャフリーメイソンの会員だったのでフリーメイソンの握手法と関係があるのかと思いましたが、よく分かりません。
もう一つ。宝石の4作、「トパーズ・ルビー・アメジスト・エメラルド」の中の「トパーズ」。トパーズの女性が左腕のひじをついている下にある顔が気になるのです。これはそういう彫刻が施された椅子がモデルとなっているのか、あるいは人の頭なのか。顔を見ると黒人男性のようにも見えます。19世紀末といえば、いまだ帝国主義の時代です。黒人男性(のように見える)頭の上に女性がひじを付くというこの描写に思想的な意図があるのか、あるいはたんなるアフリカへのエキゾチズム的な憧れであるのか。ひいてはミュシャはこうした帝国主義、植民地政策、黒人奴隷などにどのような思想を持っていたのか。気になります。
以上、今回のミュシャ展で発見したことです。それにしてもやっぱり一度は「スラブ叙事詩」を生で見たいなー。それを含め、彼の精神的な支柱であった故郷モラヴィア、そこに生きるスラブ民族への思いを感じてみたいものです。一度はやっぱり東欧へ行って見たい。