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朝日新聞歌壇

久しぶりに。今日の朝日新聞歌壇から面白い短歌を抜き出して載せていきます。 尾に触るれど動くことなき冬蜥蜴葬らむとすれば草をつかめり(香川県・藪内眞由美) だんだんとおとなしくなる身の内の鬼に向かひて少し豆撒く(前橋市・萩原葉月) 伝えたいそれ…

朝日新聞歌壇

今週は朝日新聞歌壇より面白い歌を。 「これしきはジュラ紀の平均気温だね」うそぶいて子が闊歩する夏 新潟市 太田千鶴子 乾く日を蜂いくたびも甕に飲むいのちの波紋かすか立てつつ 浜松市 松井恵 放射性物質測定検査結果福島のももと一緒に届く 仙台市 及川…

河北歌壇

宮城へ遊びに行った折、河北新報を読みました。日曜日は河北歌壇の日。今日は河北歌壇からおもしろい歌を。 貧農に生れし吾を哀れむか貧富の差無き仮設給る 宮城・山元 島田啓三郎 あの日より前に歩めぬ弱き母を許して欲しいと亡き息子に詫びる 仙台・宮城野…

朝日新聞歌壇

久しぶりに朝日新聞歌壇よりおもしろい歌を。 まるつけにわたなべ先生ぶたを書くみんなのノートぶたがいっぱい 岸和田市 谷歩希音 赤ちゃんの靴が片っぽ載せてある公園のフェンス 寂しい夜だ 広島市 楯田順子 あのときは負けたチームの悔しさに思い至らずは…

朝日新聞歌壇

なんかやったりやらなかったりですねー、このトピック。まあいいか。今日も面白い歌を。 ものうげなつとめかよひぢ いできたるいぬかきなでてけしきやはらぐ 逗子市 荒木陽一郎 特養のテレビ桟敷に待つ人がいかに嘆かんこの春場所を 東京都 影山博 乳房なき…

朝日新聞歌壇

昨日の朝日新聞歌壇より。 まつ毛まで雪積もらせて帰る子を抱いてさすってこすって溶かす 富山市 松田由紀子 おねがいがまだきまらないはつもうで考えながらちょひちょびすすむ 笠間市 高野真気 昼夜なく旗紐の音切なげに響かせ吹雪にかすむ廃校 舞鶴市 吉富…

朝日新聞歌壇

12.6の朝日新聞歌壇より。 きみ在らば喜ぶだろう泣くだろう廃家となりしに小菊が満ちぬ 広島市 和田紀元 気がついたメリーゴーランド降りるときゆれていた馬やさしい瞳 富山市 松田わこ 円空仏の笑いあう声聞こえきて祠のぞけば冬のカマキリ 蓮田市 斉藤哲哉…

朝日新聞歌壇

昨日、11/22の朝日新聞短歌より。今回は少な目かな。 螈耳(おなもみ)をつけて戻りし猫のこと書き留めて置く家計簿の隅に 山口市 山本まさみ じいちゃんも金魚も寂しいやろなあと二ひく一を子が思う秋 和泉市 星田美紀 黄金の埋蔵場所を知つてゐる秋の夕べ…

朝日新聞短歌

本日の朝日新聞歌壇より。 自分のブログで朝日新聞歌壇の論評はするつもりはありませんが(そんな立場にないです)一戸詩帆さんの買われっぷりはすごいですね。自分も好きです。あと、棚橋久子さんの歌がいいです。「捨て身のような寂しさ」って言葉、なかな…

朝日新聞歌壇

本日の朝日新聞歌壇より。 柘榴の実裂けはじめたり木の梯子掛けしままなる満月の庭 古河市 高橋こう 鳩の巣を掛けている故目を合わすことなきように庭に降り立つ 久喜市 布能寿子 蒲田から蓮沼、千鳥と駅ありていにしえはあたり水ひかりけん 東京都 倉地克次…

朝日新聞歌壇

今日の朝日新聞歌壇より。 埋まらない志望動機を満月に照らされているまだ眠れない 鴻巣市 一戸詩帆 ねこじゃらしススキの初穂犬の尻尾素直なものに秋の風を吹く 徳島市 上田由美子 切り出せる石重なりて静かなり蟷螂じっと頂きに立つ 気仙沼市 畠山登美子 …

朝日新聞歌壇

本日の朝日新聞歌壇より、いとおもしろきものを。 秋刀魚ほどうんめえ肴はあるめえな芋焼酎でまづ腸を 長野県 沓掛喜久男 ねこバスが確かに見えた空も秋逢いたいと思い逢えた人達 吹田市 川西直美 秋野菜まき終えて一合の酒にみたされ眠る幸せ 蓮田市 斎藤哲…

朝日新聞歌壇

今週の朝日新聞歌壇より。 若さとは声高きこと少女らのないしょ話が車内に満ちる 佐倉市 船岡みき 繭あまた煮つつ糸繰る母の指あかく生き生きおどりおりしか 徳島県 一宮正治 手のひらは孫を愛しむ道具なり頭撫でたり尻叩いたり 奈良市 広田頼彦 歯科眼科接…

朝日新聞歌壇

今日の朝日新聞歌壇より。 四年後のソチを目指すと言えること死など微塵も思わぬ若さ 磐田市 伊藤政則 派遣切り告げられ更衣室に行き脱ぐものを脱ぎ着るものを着る 大阪市 加冶屋恵 獅子の如く春は来るとう夫の声荒風にのりてこの春もまた 上越市 三浦礼子 …

朝日新聞歌壇

今週も朝日新聞歌壇より、面白いと感じた歌を。 私の今の知識とセンスによる選なのです。10年後に見たらまた違うのでしょうが、歌は過ぎ行く。 浜風に雪の飛びゆく丘の上の枯れ草を食む蝦夷鹿の群れ 稚内市 藤林正則 落鮎を食らいて満ちたる口ひげをゆらして…

朝日新聞歌壇

久しぶりに、気まぐれに。本日の朝日新聞歌壇より。 おじいちゃんなにやってるの今はなあお前の墓に花挿しておる 栃木市 大塚信治 真冬日に手袋忘れるはずがない置いてきたんだ手をつなぐため 名古屋市 山口朋美 妊娠のよろこびのとなり臓器ひとつ失う人あり…

朝日新聞歌壇

11/16(月)の朝日新聞歌壇より。 鳥獣の側から見れば人界は戯画のごとくに生気満てるや 下野市 若島安子 ガダルカナルの帰還兵士は笑まいつつ齢をとるのも楽ではないと 東京都 志摩華子 湖底なる倒木の間を鱒の群れまぼろしと過ぎ秋深まれる 舞鶴市 吉冨憲治 …

朝日新聞歌壇

11/2の朝日新聞歌壇より。ひさしぶりです。 見はるかす安達太良山の上にある秋天いよよ深くレモン忌 福島市 美原凍子 冬の雷逃げて駆け込む魚市にずわいは赤き湯気立ててゐる 金沢市 前川久宜 古日記開ければ病める母のこと祈る言葉のありて遙けし 横浜市 山…

朝日新聞歌壇

孤独なる老いにも似たり廃船は浜に傾き腹を晒せり 八王子市 斎賀勇 俯いて草取りをれば安堵してかわが堆肥へと鳶の子も来る 金沢市 前川久宣 放心の狸と出会ひぬ投函の眞夜の郵便ポストの前に 枚方市 福永康子 投票所の壁際に亀立ち上がりひっくり返ってまた…

朝日新聞歌壇

お久しぶりに。9/14の朝日新聞の歌壇から面白いものを。 どの坂も下りれば海へ行きあたる神戸の街と横浜の街 奈良市 杉田菜穂 あさがほの襞から襞へほころびて螺旋のかなたに大銀河あり ドイツ 西田リーバウ望東子 チュニックに黒いレギンス膝抱えわが家の式…

朝日新聞歌壇

8/3の朝日新聞歌壇から。ちょっと更新が遅くなりました。 古着屋も引き取りかねし着晒しを仔猫のように慈しみ着る 東京都 津和野次郎 望みなき願いは書けず「悲しくて泣かないように」と記す短冊 和泉市 星田美紀 選定の終りて松はすずやかに梅雨晴れの空ひ…

朝日新聞歌壇

7/27の朝日新聞歌壇から。 歩行虫(オサムシ)か塵芥虫(ゴミムシ)かはた埋葬虫(シデムシ)か雨あがりを行く子細ありげに 新潟市 太田千鶴子 浅場にて麦の穂ほどに育ちたる烏賊が深場へ落ちゆきて夏 中央市 前田良一 切られた木埋められた川消えた猫ふと思…

朝日新聞歌壇

7/13の朝日新聞歌壇より。 山里の馬頭観音ぽつねんと「明治十七年」に霧雨 福島市 美原凍子 歯科医院ピアノの曲が流れいて治療のすめば去りがたく聴く 栃木市 飯塚哲夫 母の手と吾が手を紐にゆわえて寝ぬ徘徊の母とのかなしき絆 松戸市 猪野富子 そのまんま…

朝日新聞歌壇

7/6の朝日新聞歌壇から。 ヒナキキョウニワゼキショウにキキョウソウ小さき花は小さきままに 熊本市 徳丸征子 不要なれば焼却生き埋め容赦なし鶏も鶉も弁解はせぬ 岐阜県 棚橋久子 出勤の息子は九十三歳の吾の寝息を確かめて行く 東広島市 水越龍郎 チキュウ…

朝日新聞歌壇

6/29の朝日新聞歌壇から。 KATIEとう仔猫が仔猫(ベビー)を産んだという情報(ニュース)が忽ち所内に伝わる アメリカ 郷隼人 カモシカにくわれてしまうといいながら麓に間もを植え付ける人 高山市 松田繁憲 好いちょうよ聞いちょるとかね? 大好きっち伝わ…

朝日新聞歌壇

6/22の朝日新聞歌壇から、今週も。 ベランダの掃除をせんとつまみあぐごみではあるが守宮(やもり)の干物 草加市 渡辺冽 悲しくて泣く訳じゃない透明なフォルテッシモが目に滲みただけ 八王子市 川嵜和香葉 牛糶り(せり)の終へたる後のしづまれる暗き牛舎…

朝日新聞歌壇

6/14の歌壇から。 春うらら何かをぶち壊したくてラメ入りアイシャドー引いてみる 横浜市 紅 征 死者あれば葬花の売るる吾が業に疲れし時は海猫(ごめ)を見に行く 八戸市 山村陽一 しじゅうからちぴぴちぴぴとこいのうたうたえばにわかにかきのはなちる 東村…

朝日新聞歌壇

6/8の歌壇から。 山里の伐採されし桃畑のキリカブ、キリカブ、キリカブに雨 福島市 美原凍子 金魚の子威厳を持ちて産まれ出るまつ毛のようにピッと反りたり 青森県 向山敦子 高々と白きシーツを干したのは障害のなかった五月晴れの日 神戸市 田中きくこ うど…

朝日新聞短歌

そして月曜日は朝日新聞短歌です。 それ以上それ以下もなし アマゾンの森に生まれて森に死ぬ人 川崎市 新井美千代 去年より贈られるだけの日となりて つまんないなあ母の日なのに 大東市 元野洋子 まぼろしのソースかつ丼食ひにゆく 入歯新たに少年のごと 長…

毎日新聞歌壇

先週末は帰省していたので、実家の毎日新聞の歌壇を読むことができました。 入園日に泣いていた児が五月には メッチャ楽しいなんて言ってる 米子市 永田富基子 佐田岬めでつつゆけば 密入国密輸警戒の看板のあり 奈良 峯瀬晶子 子の前で諍いをりし妻とわれに…