山崎方代歌集「こんなもんじゃ」

仕事が新宿だったので、帰りに紀伊国屋に寄ろうと思っていたが、そこまでたどり着く気力がなかった。疲れた。なのでルミネ5階の青山ブックセンターで済ませることにした。
目的の本は、山崎方代歌集「こんなもんじゃ」 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4163219706/qid=1058737054/sr=1-1/ref=sr_1_2_1/250-4273751-3884200
山崎方代は、戦前戦後を生きた歌人で、戦争のために失明、復員後、作歌を始め、恩給と靴修理や野良仕事などを生計の頼りとしながら放浪、細々と生きた人であった。彼の生活はなんというか、質素という以上に、自分の身以上のものは求めない、そんな生活であった。何かになろうなどと思わない、ただ純粋自分自身であろうとする方代の生き方に、何かになりたいと思いつつ、そのことの価値を疑ってもいる私は、とても共鳴する。
まだ読み始めたばかりなので、これから「ああ、これだなあ」という歌を少しづつ書いていきます。
死ぬ程のかなしいこともほがらかに二日一夜で忘れてしまう
自分をごまかさず、純粋自分でいることがどんなに強靭で悲しいことか。それでも生きていく。何も求めずに。自分を売り物にしてしまうことをせずに。そう、みんな自分さえ持て余して、自分のことさえ人に売り飛ばしてしまう。そうして少し楽になるけれど、でもきっとほんとうは、とても取り返すのつかないものを売り飛ばしてしまっているのだ。方代は、戦争という「みんながみんな自分を売り飛ばしてしまった」時代の被害者(にして同時に加害者)だからこそ、その後の半生を、自分を少しも売らない、純粋自分のまま生きることにこだわった人なのだと思う。