「アメリカの原理主義」読了。

中だるみしたので時間がかかってしまいましたが読了しました。長く読売新聞ニューヨーク支局長を勤めた著者が書かれた本書だが、感想は「日本人が見ているのはアメリカというのはニューヨークやカリフォルニアなのだ」ということ。そして著者の「ニューヨークやカリフォルニアはアメリカではない」という言葉が非常に印象的。
アメリカの建国思想・・・それに絶対的であろうとする・・・それがある意味アメリカの原理主義。そしてその原理主義を世界に、(彼らに言わしめれば)未開の世界に広げていかなければならない。それが多くのアメリカ・プロテスタントの原理主義なのだ。いわばこれは選民思想に近い。
宗教になじみ薄い私たち日本人からするとびっくりする話だが、聖書に書かれたキリストの再臨が実際に今後1000年の間にあると思うかという世論調査に米国民の52%が「はい」と答えており、自分が生きている間に再臨があると思うか、という問いに15%の人が「はい」と答えている。アメリカ人の多くの人はキリストの再臨は近く、選ばれた人のみが生き残るハルマゲドン(最終戦争)が近づいていると感じているのだ。もちろんその意識を芽吹かせたのは9.11同時多発テロであろう。この原理主義=宗教右派ネオコンの両輪がアメリカを動かしている。その結果がイラク戦争でありイスラエルとパレスチナの紛争なのだ。
私たち日本人が見ているアメリカ・・・それは文化的多様性と資本主義自由経済・グローバリズム・・・これらは全てニューヨークで起こっている局地的なことなのだ。アメリカ合衆国、西海岸、中西部、南部・・・全てを見渡したとき、今アメリカはある種カルト国家的にさえ見える世論が形成されつつある、これらは60-70年代の反動とも言われているが・・・
さて、そのアメリカと同盟を組む日本である。われわれは原理主義的なアメリカが突き進む・・・ハルマゲドンへの「週末の七日間」まで付き合わされる羽目になるのか?どう考えたって御免こうむる、というのが本音だろう。今度のアメリカの大統領選挙でよりアメリカが右傾化していくのなら、日本は真剣に他国と「対アメリカ対策」について考えなければなるまい。それが国連中心主義なのか、極東アジア同盟なのかはさておき。

アメリカの原理主義 (集英社新書)

アメリカの原理主義 (集英社新書)